もう一つの伝説

第4話  火薬とオイルの即興曲  後編

作:アルベルトさん



アトランティス・シティは別名「商業の都市」と呼ばれている。
ここでは週に1度中規模な市が、月に1度大規模な市場が開かれる。
前者は主に弾薬や燃料、携帯用の武器が、後者は車載用の武器が並ぶ。
そしてごく稀に発掘した車が出されることもある。以前に無力化された無人兵器が出されたことがあったが、
結局兵器としては役に立たないことが判っただけだった。
噂では、実はコントロールする方法を見つけたとか、使えるものだけ外したとか言われている。
しかし、本当の所所有者すら語ろうとしないため、真実は闇の中にある。
当然のことだが、そんな幸運はそうそうあるものではない。
今回、オークションに出されたのはマリオらが運んできた30mm連装機銃2丁だけだった。
無人兵器の弱点を手に入れた、などと言って飛び入りしてきた者も居たが、
無人兵器に関して、全くの素人ではないクリスにはその内容が全くのでたらめと判ったが、話し方はかなり流暢なものであった。
恐らく、こういった法螺を行く先々で聞かせ金を稼いでいたのだろう。
だが、この街の人には通用しなかったらしい。間もなくして怒った住人に引き摺り出されていった。
今頃は袋叩きにでも遭っているだろう。荒んだ世の中とは言え、同情する気にはなれなかった。
やがて、その日のオークションの終わりを告げる鐘が鳴った。
会場に集まっていた人々は次々と席を立っていく。クリスとレベッカも他の参加者に続いて会場を後にした。
「やれやれ、やっと終わったわ」
テントから出たところで、レベッカはあくびと一緒に言う。彼女としては、通りにある露天商を見て回りたかったのだが。
アトランティス・シティは人口が多い分、治安は余り良くない。
メインストリートなら人が居るだけましなのだが、一歩でも逸れれば、そこはもうスラムと同じである。
10歳にもなってないような子供やガリガリに痩せた大人など、自力で食うことができない連中が集まっている所だ。
彼らは他人から‘盗む’ことでその日を凌いでいる。
よそ者で、しかも女性であるレベッカは彼らの「獲物」に見事なまでに該当していた。
「これからどうするの?」
彼女は隣に立っている相棒に訊ねた。といっても、何をするかはレベッカにも判っている。ようはその順番だ。
「あのブラドっておじさんの所に行ってみる?」
そう言ってから、独り言のように付け加える。
「私は信用できないな、あの人」
「うん、僕もそう思う。だから、あの人のことをマリオかアガサに聞いてみるつもりだ。もし彼らが知ってるなら信用してもいいと思う」
「やっぱり気になるの、あのおじさんの言葉?」
その問いに頷くクリス。そして、彼の仲間が居るはずの建物へと歩き出した。

二人が待合所(という看板があった)に入った時、そこでは既に全員揃っていた。
というよりはクリス達が来るのを待っていたという方が正しいかもしれない。
そして、二人が入ってきたのを見たアガサが話し掛けてきた。
「そろそろ来る頃だと思ったよ。この後、あの荷物を運ばなきゃならなくなったんだ。
 だから、宿を探すのが少し遅くなるけど、いいかい?」
「それは構いませんが、どこへ運ぶんですか?」
クリスが訊ねる。
「ブラド、って名前の、ここの市長さ。と言ってもピンと来ないだろうけどね」
その言葉に、クリスとレベッカは思わず顔を見合わせた。
「僕達も、その人に用があるんです」

‘大破壊’からおよそ50年。人々の暮らしは今だ安定せず、むしろ大破壊直後より酷くなったとも言える。
無人兵器の暴走、モンスターの襲来、そして限られた食料や水をめぐっての人同士の争い。
それらによって地図上から消えた町や村は決して少なくはない。
そんな時代にあって、このアトランティス・シティは前世紀の面影をかなり残していた。
「元々この当たりのエリアは、高いビルが建てられなかったのだよ」
無骨な横椅子にクッションをのせただけの粗末なソファに腰掛け、パイプをくゆらせながらその老人は語った。
彼の名は、ラディック・ジョナサン・ブラド。
21世紀初頭に誕生し、わずか半世紀と経たずして世界的規模に膨れ上がった
‘ブラド・コングロマリット’の創設者の遠縁に当たる人物(と、本人は名乗った)である。
「その後、損傷の少ないビルをトーチカの変わりにして兵器を配置した。今まではなんとかやってこれたが、これからもそうとは限らん。
 それに、食料や水の奪い合いなぞ、この街では日常茶飯事になりつつある」
そういうと、ブラドは天井に向かって煙を吐き出した。
そんな彼の話は誰も聞いていない。
部屋にはブラドの他に4人―――クリスとレベッカ、それと何故か付き合うことになったマリオとアガサ―――が居る。
しかし、今では誰も真面目に聞いてはいない。そんな様子を見かねてか、一応リーダー格のマリオが切りだした。
「ブラドさん、そんな話聞くために来たんじゃねぇんだけどさ…」
もはや聞かせるというより独り言のようにぶつぶつと呟いていた(言う、というものではなくなっていた)ブラドは、
我に返ったように一同を見渡す。
「おお、これは失敬。では本題に入ろう。簡単に言うと、守る・逃げるの現状を打開したいのだよ。これからその方法を説明する」
そう言いながら彼は立ち上がると、一枚の地図を持ち出してきた。
その機敏な動作は、今まで年寄りじみた話をしていたのと同一人物とは思えないくらいであった。
もっとも、この大都市を総括しているのだから、当然といえば当然であるが。
「素手でモンスターは倒せんし、徒歩で荒野を歩くのは自殺行為だ。だからまずはもう一つの‘身体’を用意せねばならん。ここだ」
そういうと彼は、ある一点を指差した。しかしそこは何もない、というより山脈そのものを指していた。
「ここはかつて石炭の採掘所だった。閉鎖されてからは誰も近寄らなかったのだが、バイアス会長が買い取り研究所に作り変えた。
 そこにある兵器と研究データを取ってきてもらいたい」
「よく無人兵器に破壊されずに済みましたね…?」
心に浮かんだ疑問を、クリスが口にする。
一般人の見解では、無人兵器は近くを通る物体を片っ端から破壊していると思われている。
しかし、一部の人の間ではある規則性があると考えられてきた。
何もないはずの砂漠の真ん中に集結していたり、廃墟と化した都市に攻撃している姿を目撃されたためである。
それが軍事に関わる施設であることは知るべくもないが、重要な機能を持つものが狙われているという事実だけは理解されていた。
「国土防衛省のデータにはない施設だから、恐らく無事だろう。確証はないがね。
 だから、行くだけ無駄という可能性もある。しかし、この作戦が成功すれば我々は反撃の手段を得ることができるのだ。
 危険な任務だが、やってくれるか?」
戦う手段を知りながらもそれを手に入れられずに数十年を生きてきたその老人の眼差しは鋭かった。
恐らくこれが最初で最後の機会だと感じているのだろう。今日、明日も生き残れるか判らない暗黒時代。
その中の唯一の希望が自分達なのだ。戦うか否か、答えは既に決まっていた。
生まれ故郷を飛び出したあの日から、モンスター共と戦う手段を見つけると。
そして世界中の人が、己の命と自由を賭けて戦う日が来ることを夢見てきたのだ。
彼は老人を見据え、一言だけ言った。
やります、と。

それから数時間後、ブラドの住むビルの前にクリスらは集まっていた。既に準備を終え、出発を待つばかりとなっていた。
「悪いとは思うけど、一緒に来てくれて助かるよ。僕1人じゃ何もできないからね」
ランドクルーザーのFCSを点検しながらクリスが言う。
「気にするな。オレもかつてはお前のような理想を抱いていた。時が経つうちにその思いも薄れちまったがな」
「そうだったんですか。モンスターと戦おうなんてことを考えるようなのは僕だけかと思ってましたよ」
クリスの言葉に苦笑するマリオ。トレーダーの殆どは余り人付き合いは得意ではないが、彼は比較的気さくな性格なのだ。
「ヤツらに復讐したいと思っている連中は他にも沢山居るだろう。だが準備は必要だ。心しておけよ」
「さぁ、お喋りはそれくらいにして、それそろ出発しようか!」
対戦車バズーカを助手席に放り込みながら、アガサの声が飛ぶ。
絶望に満ちた人類の未来が、少しずつ変わろうとしていた。

アトランティス・シティから北へおよそ1000km。動くもののない山の中に、その洞窟の入り口は突如として現われた。
正確には、鉄の扉が現われた。直径およそ10mの半円形の対爆扉だ。
「どうやって開けようか?」
巨大な鉄の扉を見上げながらレベッカが言う。ここが目的地であり無事であることも判ったが、入れなければ何の意味もない。
「私がやってみよう、保証はないが」
自分から発言することなど今まで殆どなかったディアスが言う。そして、他の人の意見を待たずに扉へと歩き出した。
「任せて大丈夫なの?」
心持ち不安げにレベッカがアガサに尋ねる。
「できないことはしない性格だからね。まぁ見てな」
レベッカの不安を他所に、ディアスは既に作業に取り掛かっていた。
壁に取り付けられた小型のコンソールを起動させ、複雑な操作を行う。
それがどんな意味なのかは判らないが、実に手馴れているということはすぐに見て取れた。
そして彼が作業を始めてからほどなくして、正面ゲートが開いた。
「さっきのはハッキング?でもどうやって。あの技術は廃れたと思ってたのに」
技術者としてのクリスがその疑問を口にする。
ハッキングとはシステムに不正な行為でもってアクセスすることをいう。それにはコンピュータに対する高い知識と技術が要る。
しかし、大破壊から今まででそんなことをしている余裕はなかったはずだった。
既存のシステムはその殆どがダウンしたし、人々はその日の食料を得ることすらままならなかったのだから。
あれから半世紀経った今でさえ、まともに動く機械は、都市にあるプラントか車だけ。それを扱えるのは全人口の1割にも満たない。
「アイツは西側出身なのさ。向こうはこちら側よりずっと復興が進んでいる。武器や弾薬は全て西側で作られているんだ」
マリオが答える。それから自分のトラックへと向かいながら仲間達に呼びかける。
「さぁ行こう。グズグズしてる時間はない」
この施設はごく限られた部分しか電力を供給してないらしい。4台の車はヘッドライトを点灯させ、真っ暗なトンネルへと入っていった。

元々は鉱山だったとは言え、トンネルの大きさは尋常ではなかった。
中は入り口より大きく作られている。その横幅は車4,5台が並んで走れるほど広い。
ブラド・コングロマリットが買い取った時に、大々的に改築したのは間違いないようだ。
「必要な品物は最下層にあるって言ってたから、まずエレベーターか階段を探さないとな」
マリオが誰とも無しに言う。だが、それに答えたのは沈黙だけだった。
通路に灯りは灯っておらず、全員がそれぞれの武器に付けたフラッシュライトを頼りに歩いている。
その暗闇に対する恐怖と生身で戦闘になるかもしれないという不安が、彼らを無口にさせていた。
やがて先頭を歩くアガサの照らすライトが一枚のプレートを浮かび上がらせた。
そこには剥げかかった文字で「MEIN FLOOR」と書かれている。どうやらエレベーターに辿り着いたようだった。
「よかった…永久に続くのかと思っちゃった」
緊張をほぐすかのようにレベッカが言う。その言葉に皆が思わず苦笑した次の瞬間、一つの光の弾がレベッカの耳元をかすめた。
とっさに身を低くし振り返りつつ銃を構える。その先に浮かび上がったのは、何十という昆虫型の機械群だった。
「キャノンホッパーかい、面倒だね!」
そのうちの一体を真っ先に破壊したアガサが叫ぶ。それに応えるようにエネルギー弾を発射してくるマシンと応戦するクリス達。
遮蔽物のない、ただの通路での銃撃戦は彼らの方が圧倒的に不利だったが、敵の射撃性能の悪さに助けられなんとか戦える状況になっていた。
FCSの発達とAIの開発により、兵器の殆どは無人化が急速に進んだ。
そして建物内に配置するセキュリティ・システムも無人兵器は導入された。キャノンホッパーはその初期型に当たる。
しかし、その多足歩行型による汎用性の高さと小型化は需要側の要求を充分に満足するものであり、瞬く間に普及した。
しかもその特徴の一つに‘光学兵器の搭載’が挙げられる。威力こそ小さいものの、弾薬を必要としない点はかなりの魅力であった。もっとも、それらの特徴が故に装甲板はたったの1cmという薄さになってしまったのだが。
「エレベーターまで走るぞ、急げ!」
AK74アサルトライフルを乱射しながらマリオが指示する。彼は既に4発食らっていた。
1発1発の威力はさほどでもないとはいえ、防護服に覆われてない所に当たれば致命傷となる。
「電気が通ってりゃいいけどね!」
怒鳴るように―――実際怒鳴っているが―――アガサが答える。
そして弾切れになったM3ショットガンを肩に戻すと腰のポーチから手榴弾を取り出し、安全ピンを引っこ抜く。
「頭下げな!」
そう叫びながら敵の群れの真ん中へと投げ込む。それは見事にキャノンホッパーの群れをスクラップへと変えた。
「今のうちに、早く!」
MP5サブマシンガンの弾倉を交換しながらクリスが言う。
そして、全員乗り込んだことを確認して先に乗っていたレベッカが「CLOSE」と「B3」のボタンを押した。
少し間を置いて扉が閉まると、エレベーターはゆっくりと降下していった。幸いにしてここには電気が通っていたようだった。
誰ともなく安堵のため息が洩れる。
「ここまで来ておいて、下に着いたら何もありませんでした、なんてことにならなきゃいいけどね」
M3に弾薬を装填しながらアガサが言う。
最後尾で食い止めていた彼女は、一行の中で一番攻撃を食らっていた。その傷を見てレベッカが傷薬を塗る。
彼女はそれに小声で礼を言った。
「2008年6月以降、誰かが入った記録はない」
壁に寄りかかったままの姿勢でディアスが言う。しかしその一言だけで後は黙ったままだ。
「彼って何者なんですか?」
クリスが小声でマリオに問い掛ける。
「ジェネラルエレクトロニック社製、汎用型AI搭載、AX20−0076だ」
ディアス本人が答える。しかしそれが意味していることはクリスには判らなかった。
「要するにアンドロイドさ」
マリオが言う。それと同じにエレベーターが止まり、扉が開いた。
「着いたようだな。さて、行くか」

そのフロアはこの施設の中で最も広く作られていた。
高さは5階建てのビルを裕に越え、広さは400〜500平方メートルはあるだろうか。
しかし本当に驚くべきことは、このフロアにある‘もの’だ。それぞれが等間隔に並べられたもの。
アガサが明かりをつけると、その全貌が明らかとなった。
それは厚い装甲に覆われた体を持っていた。
それはどんな荒地をも踏み越える脚を持っていた。
それはどんな些細な事も見逃さない目を持っていた
そしてそれはあらゆる物を打ち砕く腕を持っていた。
有人兵器時代の終わり頃に世界中から集められた主力戦闘車両、人の操る最強の兵器がそこにあった、
心持ち砲塔を上げた位置で。それはまるで鋼鉄の鎧を纏った騎士が、主君の到来を歓迎しているかのようだった。
「こいつは凄い、本物の戦車だな」
心底驚いたという口調でマリオが呟く。他の人はただ圧倒され、何も言えないでいた。
その時、ノイズ雑じりの声が彼らの後ろから聞こえてきた。どうやらディアスが壁に掛けられたボイスレコーダーを操作したようだ。
永い眠りから覚めたかのように、ゆっくりと、それは語り出した。
「……このメッセージを聞いているということは、これらの戦車を必要としているということなのだろう。
 しかし残念なことに、私が君達にしてやれることはなさそうだ。突然コンピュータが異常な動作を始めた。
 恐らくウィルスだと思われる。しかもそれはセキュリティ・ロボにまで波状した。既に殆どの研究員や警備員が殺された。
 私はなんとかここまで辿り着くことに成功はした。だが私は兵士ではないので、用意してある戦車を扱うことができない。
 マニュアルは用意してあるが、自信がないのだ。
 武器を取ろうにも、上には暴走したロボがうろつき回っているし、
 武器格納庫へ直通している階段にはガンホールが設置してあるので、行くことは不可能だ。
 今の私にできることは、後から来るだろう人々へメッセージを託すことだけだ。
 これら戦車の操作マニュアルはそれぞれの戦車の戦闘室に置いておく。入るのに苦労しないよう、砲塔も開けておく。
 武器が要るなら、入って左手に見えるドアから上に上がって行けばいい。
 ただし、さっきも言ったように自動迎撃システムがあるので注意しろ。そしてできるならば、私達の仇を取ってくれ。
 この狂った世界を……」
それだけ言うと、レコーダーは自動的に切れた。これ以上は録音されていないようだ。
「とりあえず、動くやつを何台か持って帰らないとな。
 それぞれ気に入ったのを選んでくれ、それとディアスはガソリンがないか探して欲しい」
マリオがそう指示する。
「それじゃ、あたしは上に行って武器でも調達してくるよ。みんなはその間に選んでいるといい」
アガサはそう言うと返事を待たずにさっさとエレベーターへと向かった。もっとも、彼女を引き止めようとする者は誰も居なかったが。

武器格納庫はそれほど遠くはなかった。位置関係からここは戦車格納庫のすぐ真上に当たるのだろう。
もっとも、たったそれだけの距離でガンホールが5台も設置されていたことから、相当重要な部屋であることは容易に見当がついた。
「それじゃ、アンタはここまでだ」
そう言うとアガサは担いでいたものを床に下ろした。
それは階段の途中で見つけた、1体の白骨死体だ。あのレコーダーにメッセージを入れた本人だと彼女は思っている。
(死体と言ったって、目的地に辿り着けないんじゃ可哀想だからな)
彼は―――レコーダーの声から男だと思った―――何がしかの理由で、この部屋に来ようとしたのだろう。
しかし、志半ばで命を落とすこととなった。アガサは下のフロアに死体が無いことから、もしやと思っていた。
もしそうなら、なんとかしてやりたい、と。
アガサはトレーダーにしては珍しいほど、死者に対する畏敬の念を持っていた。
悲しみに身を任せるほどではないが、それを軽んじない。そういう考えをしている。
「……ただし、アンタの場合はあくまで『ついで』だ」
そう言いながらしばしの黙祷を捧げる。そしてここに置いてある武器を物色し始めた。
ざっと見ただけでも、ここにある武器は非常に豊富だった。
ハンドガン、ライフル、サブマシンガンに手動装填式のバズーカまで置いてある。
その他にも、強化戦闘服、コンパスやヘルメット等の軍用品。暗視ゴーグルまで置いてあった。
「…後でまた来る必要があるね、こりゃ」
苦笑しながらそう言うと、仲間の適性に合うと思う銃を選び出した。

彼らが準備を終え再び外へと出たのは、入った次の日になっていた。
物資の調達のこともあるが、戦車の操縦に慣れるのに、思ったより時間を取られたせいでもある。
「それじゃ、帰るとするか。じいさん、待ちくたびれてるだろう」
以前より充実した装備をまとった仲間達を見回して、マリオが言う。
彼は肩からSVDドラグノフ・スナイパーライフルを下げ、腰にはデザートイーグルをさした。
薄汚れたマントと帽子は相変わらずだ。戦車はかつてドイツで使用されたレオパルト2を選んだ。
砲塔の前面がくさび型をしているのが特徴だ。
「コイツの威力が試せるときが楽しみだね」
そう言ったのはアガサだ。彼女は主武器にM60E3マシンガンを選んだ。
サイドウェポンはM19マグナムを、戦車はイギリスの主力戦車チャレンジャーにした。これは機動性を重視した点が特徴と言える。
「その者、鋼鉄の鎧をまとい自ら走らずして走るなり。以前聞いた話はこれのことだったのね」
傍らにある戦車を見上げながらレベッカが言う。
彼女が選んだ武器は、ステァーAUGアサルトライフルとベレッタM9ハンドガン。
戦車はイスラエル製メルカヴァにした。これは車体が大きい代わりに、砲塔の前部面積が非常に小さくなっている。
つまり、戦車の心臓でもある砲塔の被弾率を極限まで下げた設計と言える。
「だが過信は禁物だ」
警告するようにディアスが言う。彼は輸送役として装甲トレーラーを選んだ。
多連装ロケット発射車両を改良したタイプで、以前のものより大型かつ重装甲となっている。
武器は3連装ガトリングを、副武器にM79グレネードランチャーを選んだ。というより、アガサに無理矢理持たされた。
「こいつを見せたらトミーやアレックスは何て言うかな?」
そう呟きながら自分の選んだ戦車を見上げるクリス。
それは、政府が崩壊しつつある時期にブラド・コングロマリットが発表した最新型の戦車だった。
正式名称は無く、その真紅のボディから‘レッドウルフ’と名付けられたそれは、
開発陣が打ち立てた「単座型戦車構想」に基づき、非常にコンパクトとなっている。
そのため、当時の戦車としては異例の時速90kmを叩き出すほどの機動力を持つに至った。
「これからよろしくな、相棒」
彼は肩にかけたG3アサルトライフルの肩紐を上げ直すと、その真紅の‘鎧’を身にまとった。

それから数時間後、無人の荒野を文字通り爆走する5台のクルマがあった。
無限に続く闇に射した一筋の「希望」という名の光。それが闇に飲み込まれてしまうのか、或いは夜明けを知らせる太陽となるのか。
それは誰にも判らない。
そう、「希望」である彼らにさえも。



琥月の感想

アルベルトさんの第4話後編が送られてきました。
ついにクリス達は戦車を手にしましたね。
戦車が置いてあったフロアで、気に入ったのを選んでって言ってたけど、
一体何台の戦車があったんだろう(^^;
何台もの戦車が並んでいる様はほんとすごそうです。

アルベルトさんありがとうございました。m(_ _)m

あと、これの文章は手直ししています。
僕の判断で改行をして、誤字、脱字であろうというものを変更しています。
アルベルトさんも、これはこうしてほしいなどの意見があればくださいな。

アルベルトさんへの感想はこちらです
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