戦車とは連続して100時間故障なしで動いたら信頼性が極めて高いと言われるまこと
に奇妙な工業製品であるが、しかしそれは近現代までの話である。
高度な戦車の自動化、素材の研究、特に痛みやすい走行装置などの研究が進んだことに
より大破壊と呼ばれるカスタトロフを前後して戦車の単独長距離移動は技術的には可能に
なっている。
コンピュータ・ユニット、Cユニットと略される戦闘AI搭載によって戦車の操縦が1
人で行えるようになったのも大きい。人間それ自体が水や食料を毎日必要とする補給上の
負担であるからだ。空いた人間用のスペースを別の目的に振り分けることも出来る。燃料
や弾薬をより多く積めるようになるし、装甲も厚く出来る。
よって技術的に可能な戦車の単独航であるが、それを行う人間は滅多にいない。
大破壊以後の砂漠は戦車さえも簡単に破壊する危険な生物の住処であるからだ。
さらに経済的な理由もある。戦車による単独での砂漠行は目的にもよるが不経済である。
戦車は動くだけで必ずどこか故障する。燃費もすこぶる悪い。ある有名なハンターは「戦
車とは家のガレージに飾っておく為にある。破産したくなかったら戦車などには乗らない
ことだ」とさえ言っている。
よって戦車が移動するときは必ず収益のある、最低でもガス代が出るような仕事しなが
ら砂漠を渡るのである。
それは町から町へ移動したいがモンスターと戦う力を持たない一般市民やトレーダ達の
思惑と一致する。
よって大型バスやトラック、バン等でコンボイが形成され戦車を持つハンターがそれの
護衛にあたることになるのである。
オリオン砂漠を行くコンボイは必然か偶然か大破壊のはるか昔、古の大戦争第二次世界
大戦において大西洋を往復した連合国が編んだ護送船団によく似ていた。
複雑な幾何学計算によれば船団護衛には2つのキーポイントがあった。
1つは船団の規模が大きければ大きいほど船団は安全であるということ、もう1つは船
団の護衛戦力はある一定数を超えて配置しても効果が頭打ちであるということ。
よってコンボイは大小あわせて30台を超える輸送車両と8両の戦車、3台の装甲バギ
ーで構成されていた。
古の大戦争と同じ輪形陣を作り砂塵を上げて進むコンボイを襲撃するのは並大抵のこと
ではない。よほどの火力の優越か、はたまた潜水艦のようなウルフ・パック戦術が必要で
ある。
例えオリオン砂漠でも戦車8両の火力を上回る大火力を持ったモンスターはそういない
し、単純な戦闘AIしか持たない無人兵器達が高度な連携を要するウルフ・パック戦術な
ど採りようもない。
コンボイの防御を崩せる可能性があるとするのならば、人間の盗賊が一番大きいかもし
れない。ウルフ・パックも、大火力も、人間なら意図して戦力を集めることで確保できる。
所詮人間の最大の敵は人間であるのだった。いつの時代でも。
戦車も元を正せば人間同士の戦争用に開発された兵器である。その砲口が人間に向けら
れるのはある意味当然と言えた。
コンボイを空から眺める鳥の視座を持つことが出来るのならば。
コンボイを取り巻く戦車群から離れた位置には快速の装甲バギー達が忙しそうに行った
り来たりしているのが見えるだろう。
第二次世界大戦の護送船団が前路哨戒の為に駆逐艦を前進配置しているように、砂の海
を行くコンボイも前路哨戒用にバギーを前進配置していた。機動性の高いバギーは前進配
置で索敵に走り回ったほうが使い勝手がいいのである。
自分よりも弱い敵は独力で排除、ダメなら逃げ回って本隊の戦車が到着するまで時間を
稼ぐ、コンボイの進路先を哨戒する前進配置のバギーは会敵率が高いので危険な仕事だが
その分ギャラも良い。野望のある若いハンターの登竜門と言われるポストだった。
さらにバギーには地雷探知器が搭載されていて危険な地雷原を探知する役目もある。
時折立ち止まって、無人兵器がランダムで敷設していく地雷を機銃で破壊しながらバギ
ーは砂漠を行く。
実際の所、昼間のバギーの仕事はほとんど地雷の処分ぐらいなものである。昼の砂漠で
危険な無人兵器の類と会うことはあまりない。特にバイオ系のモンスターは灼熱の太陽を
嫌って大抵は夜行性で昼間は眠っている。
危険なのは気温が下がり活動しやすく、こちらの視界が限られる夜間である。
第二次大戦の護送船団を襲ったUボートがやはり視界の限られる夜間に襲撃をかけてく
るのと同様に、オリオン砂漠のコンボイが襲撃されるのは夜間ばかりである。
よってコンボイを守るハンター達は夜間、睡眠が取れない。
すると自然に危険の少ない昼間、寝不足で船を漕いでしまうのは新米のハンターによく
あることだった。
遮光ガラスによって適度に弱められた太陽光と空調の効いたバギーの中はけだるい、け
だるい快眠空間である。
Cユニットに操縦を任せっきりにしてバギーの主は午睡を取っていた。
時折バギーの振動に合わせて眠るバギーの主の耳がピコピコと動く、バギーのドライバ
ーシートで丸くなっているのはまだ幼さ残る少女だった。
オリオン砂漠の砂の色を映したような、さらさらの金色の髪に赤いリボンが良く似合っ
て
いる。ほとんどどこかの町娘にしか見えない。
が、彼女の耳は普通の町娘とはまったく違うところに付いている。
金色の髪に溶け込んでいる金毛のきつねの耳が少女の存在を特異の者としていた。
犬や猫の多い亜人のなかで珍しい部類に入るキツネ科亜人である。
亜人は外見からでは判断できない卓抜した能力を持っている者が多い。特にキツネ科亜
人種は探索において他の追随を許さないほどの卓抜した能力を誇っていた。
時折耳をかわいらしくぴこぴこと動かすこの少女もおそらくは探索を専門とするハンタ
ー、
トレジャーハンターと呼ばれる大破壊前の都市を探る遺跡荒らしの1人に違いなかった。
そうでなければ、眠りこけるバギーの主である少女はこんな所にいるのが絶対的に異常で
ある程の普通の少女だった。
操縦、いや仕事を全て押し付けられる形になったCユニットはそれでも文句一つ言わず
に黙々と仕事、地雷探しと哨戒を続ける。
文句どころか地雷を処分するときには眠る主を起こさないように機銃の使用を最小限に
抑える気遣いをするぐらいだった。
感情を持つCユニットAIがその主に反目することはよくあると言うのに、このバギー
の主である少女は相当にCユニットのAIと仲がいいらしい。
だが、それでもCユニットAIに対応出来ない事態が起これば、その必要性からバギー
の主は心地よい午睡のまどろみから引き上げられなければいけなかった。
Pi−という電子音が車内を満たす。
本来はエラーメッセージ用の警告音だが、人間の精神を苛立たせるその電子音は目覚し
時計のアラームとしてもなかなか優秀な部類に入っている。
しかし、バギーの主の少女はCユニットAIの予想以上にタフだった。
眉一つ動かない。完璧な熟眠である。
CユニットAIは徐々に可能最大限まで目指して電子音はヴォルテージを上げていく。
最大レベルならばちょっとしたクラクションの変わりになるほどである。実際故障して
長くなるクラクションの変わりに使っているぐらいだった。
だが、可能最大まで上がったアラームを気にもせずにバギーの主は眠りこけている。
CユニットAIはアラーム音の音量リミッターを外して機構限界でアラームを鳴らすべ
きかどうか本気で迷った。最悪アラーム音出力機構が壊れてしまうかもしれない、だがそ
れでも起こすべきか、それは出力機構の修理代に見合うことなのか、否か。
かなりどうでもいい、或いはどうにもならない自問自答を繰り返した後CユニットAI
はより効率的に主を起こす方法を発見した。
おもむろにバギーが増速する。手ごろな大きさの砂丘を目指して突っ走る。
小さいながらも大きな仰角のある砂丘はちょうど良い滑走台である。
砂丘を越えてバギーは空高く舞い上がった。
砂漠用ノンパンクタイヤから金色の砂を未練に引きながらバギーは飛翔する。
シートベルトをせずにドライバーシートで丸くなっていたバギーの主である少女も物理
法則に従って共に宙に舞う。
滞空時間はそれほど長くないが、きれいな放物線を引きながらバギーは飛行した。
砂漠の路面特性を完璧に知り尽くした老練なCユニットAIは完璧な着地を実現した。
そしてバギーの主はCユニットの計算どおりに、車の慣性にとらわれたまま、完璧に計
算どおりにシートから飛び出し防弾ガラスのフロントガラスに顔面を激突させた。
鈍い音が車内に響く。
慣性計算は少し間違っていた。バギーの少女の体重をほんの少し読み間違えていたのだ。
計算に使用した数値は少女にとって好意的な値だったが、この場合意味がない。
重苦しい沈黙に包まれたバギーのフロントガラスに赤い軌跡がいくつも伝う。
「いふぁい〜」
鼻血で詰まった鼻声でバギーの主は喚いた。
「なに?なに?どうしたの〜」
文字どおり、"飛び"起きたバギーの主はバギーに備え付けられた意思疎通用の小さなチ
ャット用モニターの表示を待った。
しばし回答に深刻に迷ったCユニットAIは半ば忘れかけていたAI義務規定を思い起
こして勇を奮って主の疑問に答えた。
"Good morning"
深刻な沈黙がバギーの空気を凍らせる。
ややあってCユニットAIは文字を続けた。
"…Sorry,Macoto"
バギーの主、マコトと呼ばれた少女はしゅんとしてしまったバギーに仕方ないなと呟い
て言った。
「もうしないでよ、Piro」
"Yes"
ぴろと呼ばれたCユニットAIは嬉しそうに文字を躍らせた。
「それで、何がどうしたの」
マコトはティッシュを鼻に詰めながらぴろに状況の説明を求めた。
直ぐにモニターが切り替わり地雷探知機の探知結果が表示される。
モニター、現実の距離でバギーからほんのすぐ側の地面は黄色の光点で満たされていた。
「うわぁ、たいへん。ぴろ、銃撃して」
主の命令を受けてバギーは唯一の得物、車体前部に備え付けられた9ミリチェーンガン
で光点のある辺りを銃撃した。
たちまち小爆発が連続してマコトの耳朶を打った。
爆発は連続してやがて大きな爆発を呼ぶ。
連続した対人地雷の誘爆が重戦車すら一撃で破壊する大型対戦車地雷にたどり着いたの
である。
相当な密度で地雷原が敷かれていた。
「たいへんだぁ〜」
直ぐにマコトは自分では対処できないことを悟って本隊に連絡を取った。
「進路変更ですか」
エディフェルは狭い戦闘室内で呟いた。
ティーガーの車内は騒音で満たされていて、その呟きを聞くことが出来るのはヘッドセ
ットの向こう側にいる護衛のハンター達のリーダーだけだった。
白い蛍光燈に照らされたエディフェルの横顔が微かに影を帯びる。
昼間でも窓のない閉め切った空間である戦闘室では照明が欠かせない。もともと色白の
エディフェルは蛍光燈の白い明かりの所為で病的なまでに白く、美しい。
その横顔が影を帯びる様は幽玄の美とすら言えた。
だがそれも、見てくれる人間がいなければ意味のないことである。
その美しさに見惚れることが出来るのはティーガーのCユニットのAIだけだった。
ややあって、暗号化された通信が相手から帰ってくる。
"そうです。かなり深い地雷原が引かれています。処理するのは手持ちの器材では無理だと
思われます。迂回するしかありません"
「燃料と水は足りますか」
"心配ありません。ある程度余裕は見積もってあります。ですが拙いかもしれません。コン
ボイの進路がもれているようです"
無線機から響く声には苦みの成分が強い。
極秘のコンボイの進路を遮るように地雷原が引かれているのならば、秘密であるはずの
コンボイの進路がどこかで漏れている、と考えるのが当然であった。
そうなると今後、コンボイは地雷原を築いた何者かの襲撃を受ける可能性が高い。
護衛チームのリーダーはそれを危惧していた。
「しょうがないですね」
敵が来るのなら、降りかかる火の粉は払うまでだった。
"何時でも対応出来るようにしておいてください…きっとあなたの虎が必要になるときが来
ます。フライ・シュッツ魔弾の射手"
「わかりました。ご期待に添えるように努力します」
「ありがとうございます、よろしく頼みます」
感情の感じられない抑揚のない声で応じるエディフェルに護衛隊のリーダーは終始丁寧
に返答を返した。
ハンターであった父の知り合いであり、エディフェルも幼いころから知っている熟年の
ハンターは何かとエディフェルや姉妹の世話を焼いてくれる。
父の恩があるといっているが、今は護衛隊のリーダーとしてもう少し毅然としてほしい
ものだとエディフェルは思った。秘話通信だから良いものの、他のハンター達に聞かれた
らリーダーの威厳は失墜を免れない。
コンボイ全ての人間の命を預かる護衛隊のリーダーは有能であることは当然だが部下を
掌握するカリスマ性、指導力が欠かせなかった。
それが一介のハンターに過ぎない自分にあれほど丁寧な態度をとっていては、他のハン
ター達にあらぬ嫌疑をかけられかねない。
CユニットAIのヨークは忙しそうにコンボイや護衛のハンター達と折衝を重ねるリー
ダーの無線通信内容を多目的ディスプレイに表示していた。
苦労するリーダーの姿が脳裏によぎる。
不意に懐かしい、長らく会っていない姉の顔を思い出した。
死んだ父から若くしてキャラバンを譲り受けた姉はまだその時幼かったエディフェルに
さえ明らかに分かるほど苦労していた。
今みんなはどうしているだろうか。
ほとんど家出同然でキャラバンを飛び出してきたエディフェルには家族がどうなってい
るか全く分からなかった。
「ヨーク、覗き見は止めましょう」
CユニットAIのヨークは忠実に主の命令に従って多目的ディスプレイの盗聴内容の表
示を消した。
ティーガーの操縦を専攻し、射撃以外のその他一切を制御するCユニットAIのヨーク
も元はキャラバン最古参の大型バスの制御AIだった物をコピーして、カスタマイズした
ものである。
父が死ぬ前に形見分けとして、姉妹4人に1両づつ分けられた戦車にそれぞれ積まれた
同じ祖を持つCユニットAI。
それは蜘蛛の糸のように細い家族との絆の証だった。
砂漠の夜はひどく冷える。
吐く息は白く煙り、エンジンの火を落としたバギーの車内に広がっては消える。
砂は熱しやすく冷めやすい、砂漠は海と似ていると言うが根本的なところで決定的に異
なっている。海水の粘り強い性格に対して砂の海は酷く飽きっぽい性格なのだ。
本当はヒーターを入れたいところであるが、それにはエンジンを回さなくては行けない。
エンジンから出る熱は遠くから砂漠をうろつく無人兵器のセンサーに引っかかってしまう。
狼に襲われたバッファローの様に円陣を組んで、徹底した灯火管制を行って必死に闇に
溶け込もうとしているコンボイの努力を無に帰すわけにはいかない。
と言うより、そんなことをしようものなら味方に撃ち殺されても文句は言えないだろう。
そういうわけで、マコトは寒いバギーの車内で毛布に包まってがたがた震えていた。
マコトから1キロほど離れたところにはコンボイの大型バスやトラックが身を寄せ合う
ようにして闇の中でうずくまっている。
祖先の半分に狩りをする肉食獣を持つマコトにとって、厳重な灯火管制も熱遮断効果の
ある黒の保護シートも意味を成さない。マコトの蒼く澄んだ瞳は確実に闇の帳を打ち破り
砂漠の夜の実相を捕らえていた。
砂漠の夜をうろつくのは厳禁だった。
昼間は灼熱の陽光を避けて砂の中で眠っている危険バイオ系のモンスターがそぞろ活動
を再開するのである。コンボイは日のあるうちに野営地を定め、日没までに夕食を終えて
日が沈むと眠りにつく。
円陣の外周には戦車が配置に付き、さらに外側には簡単な警報装置と地雷原が敷かれ万
端の準備を整えて眠るのである。
もちろん外周を固める戦車隊は眠ずの番である。
マコトは備え付けのラックから魔法瓶を取り出し鉄製のカップに熱いコーヒーを注いだ。
大豆から作られた代用コーヒーの味は酷い物だったが、そもそも"本物"のコーヒーを飲
んだことのないマコトにはこれが普通だった。
コーヒーの援軍を得て昼寝をしたことも手伝って睡魔との戦いはマコトが有利に戦況を
進めていた。
不意に夜空に視線を送る。
砂漠の夜空は快晴、雲一つない。
中途半端に明るい十六夜月が砂漠の金の砂を白金に染め直している。
微かに照らし出された黒ずくめのコンボイの車両達はまるで死に絶えた町の墓標のよう
に黙して語らず、他の全てに沈黙を強いる。
だが、マコトは微かに墓標達の強制する沈黙を拒絶する意志の動きを捕まえていた。
無線傍受を警戒して使用を封印してあった無線機のヘッドセットを手に取る。
無線封止の解除は古来から戦闘の始まりを意味している。間違えましたでは済まない。
だが、マコトはためらいもなく護衛隊のリーダーを呼び出した。
「フォックスよりリーダーへ、敵はっけん〜」
いささか時間があって返答が返ってくる。
「こちらリーダー、こちらのセンサーでは確認されていない。どうぞ」
リーダーの戦車、T34/76は索敵用の大出力センサーを搭載したコンテナを牽引し
ていた。コンボイで最高の索敵能力を持っているのはリーダーの戦車、それを差し置いて
接敵を探知するのは不可能だった。
「ぴろのセンサーにも捕らえてないわよ」
「それではなぜ敵が来たと分かるんだ!」
「あう〜、良く分からないけどわかるのよ!何だかごみごみして、ざらざらしてるんだか
ら!わかりなさいよ!」
「分かるか!」
キツネ科亜人の優れた感知能力の感覚を常人に理解しろと言う方が酷と言うものである。
それぐらいに亜人種の能力は飛び抜けているのだ。
世間一般では亜人の能力に関してはまだまだ理解が不足していた。
マコトのボキャブラリはそれ以上に不足していたが。
2人の間に険悪な空気が漂う。
マコトが勝手に飛び出していくのが先か、それともリーダーの稲光が落ちるのが先か。
どちらにしろコンボイの護衛に悪影響があるのは確実である。
部下がリーダーの命令を聞かず、リーダーには部下を制御する能力が無い、と他のハン
ター達に思われたらコンボイの護衛に確実に支障をきたす。
だが幸いなことにコンボイにはリーダーの信頼の厚い、もう一人の亜人がいた。
「ティーガーよりリーダーへ、索敵に成功。無人戦車らしき集団が集結中と思います」
「リーダーより、位置は」
「9時方向、8キロ先。たくさんのオイルの臭いとガソリンの臭いがします」
「そうか、ではすぐに偵察を送ろう」
即答する。リーダーの判断は間違っていなかったが早速文句が来た。
「何でマコトの話しは信じなくて、そいつの話しは直ぐに信じるのよ」
「ごみごみとざらざらで分かるわけないだろう」
そう言われると流石にマコトも納得せざるえない。確かに自分の言葉が足らないのは故
郷にいたころ、その事でよくからかわれたことからよく知っていた。
「マコトが先に見つけたんだからね」
「分かった、そういう事にしておこう。命令だフォックス、偵察に行ってこい」
「は〜い」
ぞんざいな命令に気の無い返事を返してマコトはエンジンに火を入れた。
まだ文句は言い足りなかったが、命令なら従わなくてはいけない。それくらいの常識は
当然ハンターとして持ちあわせていた。
「ぴろ、静音走行でお願いね」
"OK"
ブルン、と150馬力もあるバギーとしてはパワフルな割に小さい振動を立ててバギー
はそろりそろりと発進した。
隠密接敵用にぴろが編み出した忍び走りである。
今までに何度もモンスターの巣になった都市遺跡を抜けたり、ストーカーのようにしつ
こく追いかけてくる旅賊を撒いてきた隠密走行である。ステルスシールドの効果と合間っ
て高い隠密性を誇っていた。
「さあ、さっき横から口を出してきたティーガーとかいう奴をぎゃふんといわせてやるん
だからね。ぴろ」
"Yes"
そろりそろりとバギーは夜の砂漠を静かに潜行した。
バギーのエンジンを切ってマコトは夜の砂漠に降り立った。
肩には護身の為のステアーAUGアサルト・ライフル。ブルパップ式で全長が短く、体
の小さいマコトにも扱いやいので愛用していた。
凛とした砂漠の夜気が心地よい。
砂漠の凍てた夜気は、なまぬるい機密されたシートの空気になれた体に心地よく、乾い
た地面に水が染み込むように肺に染み渡る。
焦りと焦燥の熱は砂漠の凍てた夜に霧散する。戦闘前の緊張した体から余分な熱が取り
除かれ、むき出しになった闘志だけが体の芯を暖める。
今宵は十六夜、欠けていくしかない月はまた満ちることを知っている。欠けていく自身
を嘆くこと無く、今宵も月明かりの晩を世界に現出する。
静かな月の晩をマコトは嫌いだった。
明るい太陽が一番よかった。今夜に比べたら新月の真闇も素敵に思えた。
月夜の砂漠は何もかも白くて、静かで、嫌いなお葬式に似ているような気がした。
何もかもが今にも静けさを支えきれずに気が狂って叫び出しそうで恐かった。
月光を受けてマコトの瞳が某と光る。
新月の真闇の中でも、ほんの僅かな星明かりを捕らえて500メートル先のコインの表
裏さえ見分けられるマコトの瞳に十六夜月は不必要に明るい。
音を立てずに、足跡すら残さない、祖先の半分が狩りに際して愛用した忍び足を積み重
ねてマコトはコンボイから遠く離れた砂丘の頂に上り詰めた。
風に乗って運ばれてくる濃密なオイルスメルと金属の擦れる音、そして暗闇に浮かぶい
くつもの鉄の塊。
嗅覚、聴覚、視覚、全てを狩りの為に研ぎ澄ましてきた祖先の血を受け継いだマコトに
とって闇の帳など在って無きがごとしだった。
夜の帳を見透かすフォックス・アイは砂漠に蠢く鋼鉄の獣をはっきりと捉えていた。
その数の多さ、30両以上はいた。驚きのあまり持ってきたステアーAUGを取り落と
しそうになる。
オリオン砂漠のどこかで、今でも活動を続けている大破壊前の科学の粋を凝らして建設
された無限生産能力を持つ地下無人工場から吐き出される無人戦車は性能こそ平凡な物が
多いが数をそろえて津波のように進撃してくる物量戦になれば凶悪な打撃力を発揮する。
集結している30両の無人戦車は十分にコンボイを全滅させるほどの戦力だった。
砂漠の夜気に冷え切った筈なのに背中に汗が伝う。
「うわぁ、T99ゴリラなんて初めて見たよ」
緊張を紛らわす為に喋ることはそれなりに効果がある。
砂漠の窪みに集結中の無人戦車軍の真ん中に堂々と鎮座している、他と明らかに風格が
違う巨大戦車がいた。
T99ゴリラ、オリオン砂漠で見られる最強の重戦車である。これを潰すには重武装の
戦車が一個中隊必要と言われるほどのビッグ・ネームだった。
不意に、T99ゴリラの砲塔が動いた。
それに合わせて全ての無人戦車の砲口が動く。
マコトはそれを食い入るように見つめた。やがてそれらはしっかりとマコトの潜んでい
る砂丘の頂に固定された。
高々と掲げられた大小の、無機質で、それでいて強い意志で固められた鉄の牙達。
それらが一斉にマコトに牙を向ける。
黒々とした、本当に昏い闇がT99ゴリラの砲身に詰まっていた。
すぐさま回れ右をしてバギーまで全力でバギーに戻る。腰が抜けてさらさらの砂に何度
も足を取られ、何度も転んで何とかバギーにたどり着いた。
ドアをあけっぱなししておいたバギーに飛び込んで無線機を立ち上げたが、息が完全に
上がって何も考えられない。
こんな時に性能の良い耳が仇になる。
キャタピラが砂を噛む音や回転数の上がるエンジン音ばかりが頭の中を駆け巡る。
脳裏に過ぎるのはT99に追い掛け回され、踏み潰され、砲撃でバラバラになる自分と
ぴろの姿ばかりだった。
震える指は何も意味のある軌跡を描かない。
ただ時間だけが空しく過ぎていく。
何時までたっても合わない無線周波数に怒りが爆発しそうになった。
それがさらに焦りを募らせて、さらに無線設定を無茶苦茶にしていく。
何もかもがどうにもならず、何もかもが駄目になっていく感覚。
明らかに初心者が初陣で陥る戦闘恐怖によるパニックだった。恐怖が焦りを生み、焦り
がミスを誘い、ミスが更なる焦りと恐怖を生む。
経験の少ないマコトを偵察に出したのは明らかにリーダーの判断ミスだった。一時の感
情的対立からコンボイは大きな蹉跌に嵌まろうとしていた。
だが、今日は幸運の女神がコンボイを味方していたらしい。
狂乱するマコトの目に、ぴろの前の主が残していったカエルをあしらったハンドルカバ
ーが目に留まった。
それだけで堰が切れたように溢れ出る涙が止まった。
乱れるままだった呼吸が少しづつ落ち着き始める。
それは何の変哲も無いただのハンドルカバーだったが、れはマコトにとって、とても大
切なものだった。
ハンドルカバーに触れただけで強ばった肩から力が抜ける。
大切な人がくれた最後の誕生日プレゼント。
何時も落ち着いていて、いつも優しく、日向の匂いのする笑顔。砂漠で生きる為のイロ
ハを教えてくれた、大切な人のくれた最後の誕生日プレゼント。
なぜ忘れていたのだろう、いつもあんなにも優しく語り掛けてくれたのに。
なぜ思い出せなかったのだろう、あんなに大切に思っていた人の教えてくれた事なのに。
不意にマコトは笑いの衝動に襲われた。
焦って、泣きじゃくって無線機を弄り回していた自分があまりにも可笑しかった。
きっかり1分、衝動のままに笑いつづけたマコトはエンジンを起こしぴろを呼び出した。
ただそれだけで無線は最適な周波数に調整され即時通信可能になった。
慌てて緊急用の手動モードで無線を弄り回していた自分が馬鹿みたいだ。
落ち着いて、よく周りを見て、そしてじっくりと考える。
ただそれだけでどんな困難も、ちっぽけに小石のように見下ろすことが出来る。
大切な人の、大切な言葉、決して忘れてはいけないこと。
無線でリーダーを呼び出す前に深呼吸をして、マコトは完全にいつものマコトに戻った。
「フォックスよりリーダーへ、接敵に成功〜。戦車は30両以上、T99ゴリラがいたよ」
「分かった、座標データーを送れ。直ぐにそこから撤退しろ」
経験不足のマコトを偵察に使ったことをミスだと気が付いたリーダーは当人がいたって
平静であることに驚きながらも、この場合において2番目に正しい指示を出した。
まだリーダーはマコトを過小に評価していた。
もしもリーダーが、この新米ハンターを教えた師が何者であるか知っていたら、1番正
しい選択肢を選んだだろう。
だからマコトが1番正しい選択肢を選んだ時、リーダーは己の不明を恥じた。
「座標データーは送るよ、でも逃げない。マコトが逃げたら誰が弾着観測をするのよ?」
「それは…」
「データーは今送ったわ、早く応援をよこして」
有無を言わせない何か、有無を言わせない圧力感、経験を積んだものが持つ独特の風格
をリーダーはマコトから感じとっていた。
本当に今話している相手はさっきの少女なのだろうか。
不意に埒も無い考えが浮かんだ。
少女はとっくの昔に死んでいて、自分は無人兵器の偽電に騙されているのではないか。
だがそれは本当に詰まらない、下らない妄想に過ぎない。この声は確実に先ほどと同じ
少女のものだった。
最早少女と呼ぶのは正しくなかった。リーダーはマコトをハンターと呼ぶべきだった。
「分かった。だが直ぐに離れろよ。タップダンサーを打ち込むからな」
「へぇ〜そんなのあるんだ」
マコトは感嘆の呟きを漏らした。
タップダンサー、戦車が主砲、機銃以外に装備する特殊装備、SEと総称されるスペシ
ャルウェポンは様々な特殊能力を持ち、または大破壊力を誇っている。
特にタップダンサーは大型ロケットで親爆弾を打ち出し、一定高度に達すると爆散して
子爆弾を大量にばら撒く広範囲破壊兵器だった。
いくら装甲の厚い戦車でも上面装甲は薄い、真上から降り注ぐ子爆弾の嵐を防ぐ傘はこ
の砂漠にはどこにも無い。
集結中の今が、先制して一網打尽にする絶好のチャンスだった。
「感謝する…頼んだぞ」
「感謝するならT99の賞金ちょうだいよ」
「…分かった。必ず取りにこいよ」
そして通信は切れた。
無限生産能力を持つ無人工場でもT99ゴリラ程の大物になると流石に大量生産は無理
らしく数が少ないのがせめてもの救いである。
だが反対にT99ゴリラは鬼のような武装と装甲を与えられている。数が少なく、その
上強い。よってほとんど全てのT99ゴリラには高額の賞金が懸けられていた。
リーダーは分かった、と言ったが多分無理だろうとマコトは思っていた。
基本的に賞金は賞金首を倒した者に与えられる。共同撃破なら参加した人間すべてに分
割して渡される。多分他のハンター達は分け前を要求するだろう。
だが、リーダーは必ず払うに違いない。リーダーは必ず約束を守る漢だったから、だか
らこそハンター達はリーダーをリーダーとして認めているんだ。
海千山千のハンター達を従え、時として「死ね」と命令することさえあるコンボイの護
衛リーダーに指名されるということはそういう事だった。
ほどなくしてリーダーから再び無線が入った。
「準備よし、攻撃を開始する。オープン・ファイア!」
攻撃緒元をCユニットに入力された大型6輪装甲車は車体上部に備え付けられた巨大な
金属製の箱を旋回させた。
箱の中は3つに区切られ、それぞれのスペースに各1発ずつ大型ロケット弾、300ミ
リロケット弾が装填されていた。
タップダンサーの正体は大破壊に大量使用されたMRLS広域目標破壊兵器である。3
00ミリロケット弾は内部に644個の子爆弾を抱え最大射程は30キロを越える。
8キロなど目と鼻の先と言っていい。
着弾地点のありとあらゆる物を根こそぎなぎ払う天雷の一撃は己の力を存分に試すこと
が出来る喜びをアルミ製弾殻の奥に隠しながら攻撃の時を密かに待った。
入力された攻撃緒元に従って微調整を行い、発射体勢を整える。
ほどなくして届いた攻撃開始命令を受けて、300ミリロケット弾の推進システムに火
が入り、固形ロケット燃料が爆発的な化学反応を開始、盛大な噴煙と100キロ先からで
も観測できるほどの眩い推進炎を引いてロケット弾は突進を開始した。
閃光が一瞬砂漠を照らし、それが消えると再び闇が押し返す。
だが、一度閃光に眠りを妨げられた鋼鉄の猛獣達はもう眠ることが出来ない。
再び猛獣達が眠るためには、一度腹を満たす必要があった。
眩い閃光に削り取られた夜の闇からゆっくりとティーガーが姿を現した。機関は戦闘機
動まで引きあがられ、後部の2対の排気管からは唸り声のように黒煙が煙らぐ。
第二撃を放つロケット弾の盛大な推進炎に見送られ、勇敢な子狐を手助けする為に鋼鉄
の虎は進撃を開始した。
闇を噴射炎で切り裂きつつ集結中の無人戦車軍の直上高度数十メートルで、記録された
座標データーと近接信管の助けを借りて300ミリロケット弾は爆発、炎の嵐を現出させ
た。
爆心地から地表までの半径300メートルの円錐空間に、濃密な小型爆弾をばらまいた
親爆弾は瞬時に粉々に砕け散り子爆弾と共に戦車の最も手薄な装甲上面に降り注いだ。
最も薄い上面装甲に直撃を受けた無人戦車は子爆弾から吹き出す高熱銅噴流にAIチッ
プを焼き尽くされ、弾薬に誘爆して宙に舞った。
また直撃を免れ第二撃を警戒して回避運動に入った無人戦車達は直撃の配当から漏れて
爆発することなく、じっと地面で戦車が踏みに来るのを待っていた子爆弾に履帯を吹き飛
ばされ、上面装甲よりさらに薄い車体下部を貫かれ次々に沈黙する。
動けない戦車は鉄の棺桶。
はるか昔、古の第二次世界大戦のころから続く戦車戦の鉄則は無人戦車を相手にも通じ
る鉄の掟である。足を切られた無人戦車はもう何も意味がない。
タップダンサーの現出する破壊は圧倒的だった。
だが、直撃を受けて生きている無人戦車達もいた。
T99ゴリラは当然として、死神戦車、ガンタワー、AMスラッシャー、いずれも高い
打撃力を誇る重量級無人戦車ばかりである。
コストの安い自走砲や軽戦車の類も幸運の配当を受けたものはかなりの数が生きていた。
速やかに第二撃を放つ為に攻撃緒元を収集する。
CユニットAIのぴろがマシンスッペクの全てを振り絞り火急速やかに第二撃の攻撃緒
元をはじき出した。分散化しても残る密集箇所、敵戦力の脅威度から最適効率の攻撃緒元
をはじき出す。
小高い砂丘は格好の弾着観測所だった。
だが長居はできない。マコトから発進される無線を傍受して、マコトが弾着観測班であ
ることを看破した無人戦車達が一斉に射掛けていたからである。
回避運動をしながらもデーターだけはしっかりと送信して一目散に逃げる。
バギー並みに足の早い軽戦車や装甲車の類は吐いて捨てるほどいるのだ。護身にすら不
足を感じる武装しかないぴろではとても太刀打ち出来ない。
無人戦車が逃走するバギーを本格的に追撃し始めたところで天雷の第二撃が降り注いだ。
再び同じパターンで炎の嵐を現出させたタップダンサーはマコトからのデーター送信が
なくなったことで続く最後の第三撃では有効打を出すことが出来なかったが、第二撃はそ
れを補って余る打撃を無人戦車軍に与えた。
無人戦車軍の中でも有数の打撃力を誇るガンタワーが直撃5発で完全に沈黙し、T99
ゴリラの主砲塔のターレットを歪ませ、その戦力価値を消滅させた。
また逃げるマコトを追撃する足の速い死神戦車の進路を地雷になった子爆弾が塞ぎ、マ
コトが逃げる為の貴重な時間を稼ぎ出した。
だが、既に取り付きつつあった装甲車を破壊してくれる程の幸運をマコトは持ち合わせ
ていなかった。
例え装甲車の20ミリや30ミリ機関砲でも、装甲など在って無きに等しいバギーにと
って、それは200ミリクラスの重砲と全く変わらない凶悪な威力をもった脅威である。
むしろ発射速度の速い機関砲の方がよほど危険だった。
30ミリ機関砲の連続する雷鳴が夜の砂漠に響き渡る。
それを右へ、左へ、フェイントを交えながらぴろは攻撃を躱す。
炸裂弾、徹甲弾、曳航弾、闇を切れ裂いて飛ぶオレンジ色をした死の塊がバギーのすぐ
側の地面を叩き、砂塵を吹き上げる。
マコトに出来ることは、ただぴろの操縦テクニックを信じて頭を打たないように必死に
ステアリングにしがみつくだけである。
炸裂する機関砲弾の破片が万遍なくバギーの車体を叩くが、対スプリンター用の装甲ぐ
らいは備えてあるバギーには有効打にならない。
数度の攻撃で、直撃しかバギーを破壊する術の無いことを悟った無人戦車AIはエンジ
ンパワーを上げてバギーへ少しずつにじり寄った。
近くなれば近くなるほど、照準は正確になっていく。
赤く焼けた牛乳瓶サイズの機関砲弾が車体を掠めるたびにマコトは悲鳴を上げる。
それでもマコトは決して、バックミラーに写る無人戦車からは目を離さなかった。ただ
ただ相棒に対する絶対的な信頼だけでマコトは恐怖に打ち勝った。
ぴろはずっとあの人と一緒に戦ってきたバギーだから。絶対にこんな半端な奴等に負け
るわけ無い、とマコトは本気で信じた。
ぴろがいる限り絶対に自分は死なないと確信していた。
それが現実に有り得ないことだとしても、絶対に死なないと思うだけで心が軽くなった。
今も装甲車に追いかけられているのに、マコトはかすり傷一つ負っていないじゃない、
と繰り返し、繰り返し、自分に言い聞かせる。
落ち着いて考えれば何をすればいいか、よく分かる。
あの人が優しく教えてくれたことの意味がよく分かる。
あの人がなんであんなに強かったのか、よく分かる。
今のマコトはあの人に遠く及ばないけれど。マコトは昔あの人も立ったはずのスタート
ラインに今、立ったような気がした。
だから、あの人と同じようにマコトは絶対に死なない。
直撃コースに乗った機関砲弾の連なりを、ぴろは自身でもよく分からないセンサー使用
方法と演算処理、そして正体不明のアルゴリズムを用いて緊急回避した。
スプリンターで叩かれてあちこちに軽い傷を負った車体が軋みを鳴げ、サスペンション
が急激な重量移動によって生じる破壊的な負荷を支え、車体は右にターン。
再び鉄拳の連なりは地面を空しくノックした。
だが、さらに回避でスピードの落ちたところにそれを見越した銃撃が襲い掛かる。
回避直後で路面に対する抵抗値が少ないぴろの四肢はエンジンの持てる力を路面に伝え
きれない。空しく砂を巻き上げるのみだ。
高速で迫る雷鳴は一切の容赦も無く降り注ぐ。
車体側面に向かって延びる銃撃を回避する術をぴろは持ち得ない。
瞬時にその攻撃を受けたものとして、ダメージの予測を立てようとしたぴろは人間の数
十倍の高速思考世界でまだ幼い新しい主を垣間見た。
ステアリングにしがみつき、必死に耐える少女。
赤ん坊のころから共にあり、共に学び、遊び、生活を共にしてきた少女。
死に際に、先代から新しいマスターとして守るように言い付けられた、守るべき少女。
垣間見た少女の瞳は決して諦めになど染まっていない。
迫り来る曳航弾を睨み付けていた。
口元には笑みすら浮かべて、少女は対決していた。
少女…マスターは他者の意志強要を受け入れることを善しとしない。
そんなことは最初に出会った時から知っていた。知っていたのに、忘れていたのだ。
なんてことだろうか。
マスターがそうならば私も、他者の意志強要を受け入れることを善しとしない。
決して、してやりはしない。
そんなものは、全て打ち砕いてみせる。
高速思考世界から現実世界に、演算結果を車体の反応ポテンシャル限界速度で下達。そ
れに従って信じられない速度で車体は全ての反応行動を終了させる。
何しろそれは実に単純なので、全行程終了までコンマ1秒も要らない
電気信号で命令を受けた油圧機構はその機構が担当する機能中でも最もポピュラーな作
動を一瞬で終了させた。
油圧機構全力のブレーキング、そしてスピンターン。
車体の目と鼻の先を曳航弾の奔流が流れ過ぎる。
高速で移動する目標を撃つには目標の未来位置へ弾丸を叩き込む。もしも途中で目標が
進路や速度を変えたら予測は外れで仕切り直しである。
途中で停止したバギーは永久に装甲車のAIがはじき出した未来位置に到達しない。
鋼鉄の奔流は再び空しく空を切った。
消しきれない慣性を利用して180度スピンターンを果たしたぴろは無人装甲車に正面
から向き直った。
一気に最大出力まで引き上げられたエンジンが咆哮し、爆発的な加速がマコトをシート
に押し付ける。
砂塵を吹き上げバギーは突進する。
9ミリチェーンガンが吠え、1分間に3000発以上の弾丸のシャワーが装甲車に降り
注ぐ。もちろん全て仲良く装甲車の装甲に微かな足跡を残して弾かれる。運良く30ミリ
機関砲の砲口に飛び込んだりしないし、センサー類を運良く破壊することも無い。
だがそれで十分だった。
ただのバギーが曲りなりにも装甲を持った装甲車に突撃しながら、9ミリチェーンガン
を乱射するなど自殺行為以外の何でもない。
だからそれゆえ、奇襲になった。
無人戦車のAIが正確に事態を把握し、攻撃を再開しようとした時には既にぴろは装甲
車の懐に飛び込むことに成功していた。
並走するぴろに砲口を向けようとした装甲車はガツンとという音と共に砲塔がバギーの
フロントに引っかかって機関砲を指向することが出来ないことに気がついた。
逆回転をしても密着しているバギーのリアに引っかかって車体を狙うことが出来ない。
引き金を絞っても空しく砂漠に弾を撃ち込むだけだった。
攻撃できない。
それが装甲車AIの出した結論だった。
装甲車AIの数十倍の演算スピードを持つぴろは装甲車AIが対策を考え出す前に次の
手を打った。
9ミリチェーンガンが静かに旋回して装甲車の側面を指向する。
装甲を持たないバイオ系モンスターを掃射する為に拳銃弾を使う小型のバルカン砲は例
えゼロ距離から撃っても装甲車の側面装甲を貫くことはできない。
しかし、それにかまわず分間3000発以上の鋼鉄のシャワーが装甲車の装甲を乱打し
て、戦場音楽にドラム・ビートを現出する。
装甲車のAIはその行動を全く無意味なものと断定した。
自分の装甲は決して厚くないが9ミリ弾に抜かれるほどお粗末でもない。最低でも13
ミリ以上の弾丸が必要である。
装甲車のAIが危惧しているのは至近距離からの対戦車ロケット等による攻撃だった。
バギーのドライバーが何かの対戦車兵器を持っていたら、この距離では躱しようがない。
しかしバギーのドライバーは何もしようとしない、ソフトスキン用の車載機銃が意味の
無い攻撃をするだけである。
感情の無い戦闘AIがバギーからの攻撃が無意味であることや、一瞬の不意を衝かれて
自分の攻撃が封じられた事に対して感想を思い浮かべることは無い。
粗製濫造の装甲車にそのようなことを考える感情機能を付与することを、彼の母である
地下無人工場の制御AIは無駄であると判断したからである。感情機構に回すゆとりは戦
闘に必要な高速処理能力に回された。
だがその彼をしても、何とか引き剥がそうとする自分にぴったりと密着して無駄な攻撃
を続けるバギーの戦闘AIの意図がさっぱり理解できなかった。
しかし自身の身に響く正体不明のビート、リズムに関しては直ぐに検討がついた。
ビートは大量に降り注ぐ9ミリ弾が自身の側面装甲に弾かれて飛ぶ音である。
リズムは6銃身のチェーンガンが一回転する周期に合わせて連続している。
それを合わせると一種の規則性をもったビートとリズムの集合体、音楽になった。
感情を持たない装甲車のAIにそれは理解できないものだったが、何故か彼はそれに聞
き入った。そうすることがとても自然であると思われたからである。
9ミリ弾の弾ける音と、チェーンガンの回転周期のリズムで出来たレクイエムを。
ぴろの神業的な走行技術と9ミリチェーンガンの卓越した速射性能により、装甲車の側
面装甲の全く同じ場所に千数発の弾丸が集中した、結果生じた振動波は次々に装甲車の体
を構成するパーツを繋ぎ止めるリベットを破壊していった。
例え無人工場で生産された戦車でも、基本的な部品の接合方法は全く人間のそれと同じ
である。リベット、ボルト、溶接、そのうちのどれかしかない。
リベット打ちとボルト止めを併用して製造された装甲車は振動波でリベット接合が崩壊
し、ボルトが振動に耐え切れずに弾けとんだ。
古の第二次世界大戦においても重装甲の戦車が多数の対戦車砲の乱打をあびて装甲こそ
無事だったものの、衝撃で弾けとんだボルトが兆弾して中にいる戦車兵を殺したのと同じ
ように、極点に集中射された9ミリ弾が生み出した振動波はリベットを引き剥がし、ボル
トを弾け飛ばした。
エンジンが、砲塔が、サスペンションが、ありとあらゆるパーツが接合を失い崩壊する。
装甲車の戦闘AIが事態に気がついた時には、彼の命令を聞くパーツは全く無くなって
いた。自身を構成するパーツの山に埋もれて、戦闘AIは自壊プログラムを作動させ消滅
した。
動輪が回転を停止し、盛んに煙を噴き出していた排気管からでる黒い煙が止まった。
背の低いシルウェットを持つ装甲車は砲塔をフロントに引っかけまま完全に停止した。
完全に止まっている。
試しにぴろから降りて直に触れてみても、余熱は夜気に消えるだけでうんとも、すんと
も言わない。耳を澄ませても、夜目の利く目をどれだけ細めても無人戦車は完璧に動かな
い。
「勝っちゃった」
ぽつりとマコトは呟いた。
それを聞きつけたのかぴろは数度フロントライトを点滅させた。
戦勝祝いである。
9ミリチェーンガン1丁でバギーが重武装の装甲車に勝った。
「夢じゃ…ないわよね」
抓る頬が痛かった。間違いない、夢じゃない。
「ははっ、はははっ、あはははっ」
何もかもが止まった十六夜の砂漠に笑い声が木霊する。
底無しに静かな砂漠の夜に笑い声とボンネットを叩く音が響く。最初は小さく、徐々に
大きく。最後は弾けるように。少女とAIの勝利の歓声が響く。
点灯を繰り返すフロントライトが砂漠に眩く輝く。
コンボイから遠く離れて、ここがどこであるかも分かっていない1人と1個だったが、
そんなことは両方とも気が付いていない。
ただ、今は手にした勝利を素直に喜んでいた。
1人と1個の歓声は夜の砂漠に響いた。
余りにも嬉しすぎて、嬉しさの余り自分達が今戦争をしていることを忘れるぐらいに。
1人と1個の歓声は夜の砂漠に響いた。
余りも油断し過ぎて、タップ・ダンサーの子爆弾が作った地雷原を迂回をしながらも執
拗に追いかけてきた死神戦車に狙われている気が付かないくらいに
稜線から、砂丘から砲塔だけを覗かせて死神戦車はぴろを狙撃した。
75ミリ榴弾は装甲など全く持たないバギーを一撃で吹き飛ばした。
大量のスプリンターが周囲にあるもの全てをなぎ払う。
燃料のガソリンに引火、誘爆したバギーは一瞬にして炎上、原形を止めないぐらいに破
壊される。
死神戦車のセンサー類はそれらの一連のプロセスをバギーの側で機能を停止している装
甲車の数段上のセンサー類で捉えていた。
あっけない、感情を持たない量産品の死神戦車のAIはそんな単純な感慨すら思い浮か
ばない。
一度目を付けたら、地の果てまで追いかけてくることから仇名付けられた死神戦車は無
機質な光学センサーを炎上するバギーにポイントした。
バギーの機能は完全に停止している。
回復の可能性は0%。戦力的価値はまったく無い。
光学センサーは次に周囲の捜索を行う。
あの攻撃で生き残れる可能性はほぼゼロであるが、確証はない。暗視スコープで覗いた
時にドライバーの頭には1対の亜人種の特徴としてデータに保存されている特徴的な耳が
あった。
亜人種の生存能力を考えれば、周囲の捜索は実行する価値はあると思われた。
炎上するバギーの過剰反応を拾わないようにして、暗闇を見通す各種センサーが丹念に
周囲を捜索する。
すると暗視スコープの一基が機能を停止した味方の装甲車の影で動く人型を捉えた。
やはり亜人種のドライバーは生きていた。
爆発の際、爆風とスプリンターの影になる装甲車の陰に飛び込んでいたのだ。
その生存能力の高さは驚嘆に値するものだったが、あいにく驚くといった高等な感情は
量産される無人兵器には存在しない。
砲塔を旋回させ、倒れている亜人に照準を合わせる。
榴弾が装填して確実を期す。
75ミリとそれほど口径は大きくないが、この距離では外すことなどありえないし、榴
弾の被害直径からしても逃れる術はない。
だがしかし、それで良いのかという疑問が死神戦車のAIに浮かんだ。
倒れている亜人は放置しておいても死ぬかもしれないし、何より弾が無駄だと思われた。
おそらく本隊は壊滅してしまったのだろう。本隊との連絡は途切れたままであることを
考えるのならば、慌てて殺す必要性はない。
近づいて機銃で撃つなり、履帯で踏み潰すなりして確実かつ経済的に殺すべきではない
だろうか。
本隊が壊滅した可能性は高く、今後基地に帰るまで単独で行動しなければいけないこと
を考えると亜人1人相手に榴弾を使うのは合理的ではない。
ほんのコンマ数秒単位で結論を出した死神戦車は早速、傷ついた獲物を完全に抹殺すべ
く炎上するバギーに近づいていった。
低くまとまったシルウェットもつ戦車がふらふらと炎に吸い寄せられていく。
それはまるで熱に浮かされたような、松明に向かって墜ちていく蛾のように見えた。
炎に触れたら最後であるというのに、なぜ蛾は火に飛び込むのだろうか。あの死神戦車
も同じである。なぜ、光に吸い寄せられるのか。
闇の中で光を探すことは常に正しいとは限らない。それは多くの場合幻惑の光に他なら
づ、闇それ自体に既に答えがあるのだ。
暗視スコープ無しでも猫科亜人種のエディフェルの目は燃えるバギーの炎を受けて、シ
ルウェットを浮かび上がらせた死神戦車の姿をはっきりと捉えることが出来た。
闇の中で、のこのこ光に近づいていけば、光を背景にシルウェットを浮かび上がらせて
位置を暴露してしまう、というのは夜戦の基礎中の基礎だった。
「…知らないはずがないですよね」
知っていてあえて無視しているのか、それとも何かの罠なのか。
罠だとしたら横撃の対戦車砲が潜んでいる可能性があったが、特に何も臭いや音はしな
い。
夜戦では下手なセンサーよりも夜戦では自分の五感の方がずっと頼りになる。
嗅覚、聴覚、視覚、勘、どれもが異常はないと言っている。
ならば、それを信じるしかない。
エディフェルは双眼鏡をしまって、砲塔ハッチを閉めた。
「ヨーク。弾種、高速徹甲。対戦車戦闘」
ヨークの方は既に測距も終わり何時でも撃てる準備が整っていた。
距離2500メートル。
狙撃用にカスタマイズした、タグステン弾芯を持ったAPDS弾が装填されている。
実用戦闘距離限界からの超長距離射撃。
流石にこの距離だと走行中射撃ではエディフェルも当てる自信が無い。停車して入念に
測距をして、Cユニットの支援をフルに使って狙撃する。
以前、最大で3000メートルから射撃をしたこともあるが、今はそんな無茶をする必
要はなかった。それに夜中である。エディフェルには夜の闇は何の制約にもならないが、
ティーガーのセンサー類はそうもいかない。
「生きていれば良いのですが…」
素早く動き回るのが苦手なティーガーでカーチェスをするバギーを追いかけるのはかな
り無理があった。何とか、この瞬間に間に合ったことがすでに奇跡だった。
奇跡を用いても追いついても、既にバギーは死神戦車に撃破された後だった。
エディフェルはそれが悔しかった。
後少しで、助けられたかもしれないのに。
ターゲットスコープのクロスに一杯に死神戦車の傾斜した側面装甲が広がる。
「Feuer!!」
発射ペダルを踏み込む。
一瞬だけ接続された電気回路が電流を流し、それが88ミリ徹甲弾の装薬に伝わり一瞬
の内に、水素、酸素の化学反応が始まる。
爆発的、否。爆発した装薬は急速に体積を増しつつ、閉鎖された空間、薬室を満たした。
収まりきれなくなった体積は外へ逃れようとする。それを邪魔する88ミリAPDS弾
の底部を押しつつ、爆発はさらに体積を更に膨張させる。
底部を押されたAPDS弾は爆発の膨張スピードよりも遅いスピードで急速に加速しつ
つ、出口を目指した。
爆発は自由な世界に解き放たれ、砲声という産声を上げた。
長距離狙撃用に装薬を増填したAPDS弾は砲身長5メートに達するアハトアハトの砲
身を駆け抜けるうちに、砲身の耐えられる限界速度秒速1100メートルを超え、砲の命
数を盛大に削りながら加速、十分な運動エネルギーを与えられ、一撃で死神戦車の側面装
甲を貫通、爆砕した。
蛾は光の中に飛び込んで死ぬ。
夜戦を得意とした、あるハンターの言葉である。
燃えるバギーの明かりに不用意に近づいた死神戦車は炎に狩られた。
明るい松明が闇を削る。
燃えるぴろと憎い死神が赤く燃える。
涙は流れない。出ているのに流れない。
出るそばから猛烈な輻射熱に抹殺されて砂漠の空に消える。
体が熱い。
大量に血を失ったのに、ぴろの燃える熱で体が熱かった。
世界には2つの太陽があって、あたしは2つの太陽に炙られている。
ひらひらと蝶とは違う独特の飛びかたをする蛾が光を失って、ぼんやりと虚空を眺める
マコトの瞳の淵を横切った。
太陽に光を求めて蛾が飛び込んでいく。
過酷な砂漠を生き抜いてきた虫達が火を目の前にすると、自分から命を捨てに行こうと
するのはとても不思議なことだった。
炎に羽を焼かれた蛾が墜ちていく。
その様子はとてもきれいで、全く理解できない。
涙は流れなくても、鳴咽だけは夜の砂漠に響く。
今すぐ駆け寄ってぴろの炎を消してやりたいのに、指先ひとつ動かすことさえ、ままな
らない。まるで身体が人形になってしまったようだった。
ただじっと燃えるぴろを見詰めつづけるしかなかった。
それが悔しくて、悲しくて、マコトは涙の流れない鳴咽を漏らすしかない。
なんて無様なんだろう。
今のあたしは助けに来てくれた人が名前を聞いているのに、満足な返事一つ返すことが
できない。
「お名前は?お名前は?」
あたしは掠れた声で返事を返すことが精一杯だった。
「ま・・・こ・と」
この人は誰なんだろう?
掠れた視界にあるのは砂色の砂漠迷彩服と草色のタンク・ジャケットを着込んだおかっ
ぱに近いショート・ボブの、自分に近いくらいの少女だ。
それ以外には燃えるぴろしか目に入らない。
「もう泣かないで・・・あなたの友達は無事だから」
つまらない気休めを言うのは止めてほしいと思う。
何時か、誰かが言っていた。
中途半端な同情は何よりも残酷だって。
ぴろは燃えてしまったんだ。
もう、帰ってこない。
「う・・そ・つき」
「…嘘ではありません。あなたのお友達はそこの装甲車の中にいます」
助けに来てくれた少女はぴろが倒した装甲車に視線を向けた。
8輪の装甲車は無言で佇んでいる。
それはもう唯の抜け殻だ。ぴろがいるわけが無い。
でも、おかっぱ頭の少女が嘘を言っているようには見えなかった。
一体どちらが正しいのだろうか、眠くなってきたので考えることが億劫だった。
せめて眠る前に名前くらい聞いておこうと思った。
もしも次、目覚めることができたら。探し出してお礼を言うために。
「あなたの名前を教えて」
「私は・・・エディフェル」
あたしはこの人の顔と名前をしっかりと頭に刻み込んだ。
それだけで、もう限界であたしは砂漠に顔を突っ伏した。
砂は燃えるぴろの熱で熱くなっていた。この熱も忘れないようにしっかりと最後に記憶
した。この熱はぴろの暖かさだから、決して忘れない自信があった。
夜の砂漠を焦がす松明は2つ、炎に照らされて長い影を砂漠に落とす人と物が3つ。
1つは鋼鉄の虎。
もう1つは一度敗れた物。
もう一つは血まみれた、意識を闇に埋めてもなお、泣きはらす亜人の少女を抱きかかえ
た、これも亜人の少女。
敗者と勝者。
砂漠に生きるもの全て、このどちらかしかない。
燃える松明に焦がされた熱砂にて、対極は出会った。
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